痛みを改めて考える 2
2026/10/29(木)
前稿「痛みを改めて考える」の続きです
炎症などがない神経根を圧迫しても痛みは生じない
これが前稿の結論(めいたもの)でした
直観的には説得力があっても厳密には成立しない
これが従来の神経圧迫説への評価です
では本当に脊椎骨の"捻れ"や前後のズレ、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症がもたらす"圧迫"は痛みを生じさせ得ないのか
もう少し細かく調べてみました
また「脳の中の痛み」からの抜粋引用です
P50
異所性発火(放電)とは何か
神経の伝導信号は電気的な発火(活動電位)に依存している
本体は膜電位の急速な変化によるもので、そのルートは受容器と脳を結んでいる
中略
侵害受容器に閾値(この値を超えないと興奮は起きない=全か無の法則)を超えた刺激が加わると、その信号は脱分極と再分極を頻発しながら脳・中枢に向けて上行する
これは正常な信号の発火伝導であるが、異所性発火はこの正規の生理学のルート辿らない
受容器からの信号とは無関係に発火放電が起きる
中略
以下横田敏勝教授の見解
痛覚受容器を介さずに神経線維化ラインパルスが発生することを異所性興奮という
異所性興奮が生じる可能性が高いのは、脱髄部および障害された末梢神経の側芽と神経種である
中略
このように本来的には放電現象がみられない部分にイレギュラーなスパイクが現れる現象を指しています
その多くは長期間の圧迫による脱髄(神経を包む膜の脱落)、切断や障害がまねく再生プロセスが行われているところにでやすいとしています
これが感覚神経に生じると疼痛、運動神経に生じれば麻痺などが現れやすくなります
単純な神経圧迫は痛みを生じさせないが、脱髄による異所性発火は生じさせる可能性を持っている
またこの時神経根に栄養供給を行っている微小血管の血行障害が生じる可能性は高い
特に圧の低い静脈にそれが生じると環流障害によって「浮腫」が生じ得る
浮腫はその中に白血球を含むので免疫応答が起きやすくなる
また脊柱管出口付近は硬膜の一部が延長する形で神経を包んでいます(硬膜袖と言います)
これは途中で神経周膜と混じり合いますが、硬膜本体が何らかの理由で硬化(例えば動脈硬化を理由とする伸縮性の低下)していれば,その延長上にある神経周膜も動きづらくなり、神経線維滑走性の低下が呼び込む問題が生じうる
さらには上記のことがもたらす中枢感作(中枢における疼痛感知領域の拡大や疼痛抑制メカニズムの破綻)では、持続的な疼痛が交感神経を刺激し続け、これが気圧に対する神経系の追従性を低下させる
などなどを考えると「神経圧迫説はナンセンス」と言いきれない感じがします
神経や硬膜を除圧しただけでは治らないケースは多いですが、それを頭から否定するのもまた妥当ではない
長年施術をしてきて画像診断により椎間板や脊柱管内の極端な画像を見せてもらうことはよくあります
その程度と痛みやしびれ、運動障害の程度は必ずしも一致せず自分の「痛み発生メカニズム」の解釈に疑問を持ち始めたのが2000年前後
中枢感作を含めた「単純では無い大規模なシステム障害による痛み」もまた多いと考えさせられたのも同じ時期です
当然細かい原因が重なって出来ている痛みもあります
単純には考えるべきではないが、理由を知ればその解決策や解決イメージが見えやすくなります
一足飛びに「究極の回答」が得られるなんて妄想はとうの昔に捨てましたがなかなか興味深い話に近付いているなという実感もあります
